生物多様性

基本的な考え方・方針

気候変動や自然資本の劣化は、天然原料の収量・品質の低下や各種規制の強化等、さまざまなリスクをもたらします。一方、環境意識・健康意識向上に伴う代替食品へのフレーバー需要の増加や省プラスチック等の環境保全型商品の需要増加、サステナビリティ関連の取り組みに対するこれまで以上の評判向上等、多くの事業機会も創出すると考えられます。

このような将来の環境変化に対して、当社グループは、世界が抱える課題を香りの技術を使って解決することで、豊かな社会づくりへの貢献と持続的成長の実現を目指します。当社では、パリ協定や日本政府の目標を踏まえ、「GHG排出量2030年度46%削減(2013年度比)」を掲げていますが、パリ協定への整合性を検証するSBT(Science Based Targets)認定の取得を⽬指すため、2024年5⽉17⽇にSBTi事務局へコミットメント・レターを提出しました。
バリューチェーン全体を通じて、カーボンニュートラルやネイチャーポジティブの実現に向けて、取り組みを進めます。

なお、当社グループは、2022年3月に「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言」への賛同を表明しています。また、TCFD及びTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の開示提言を踏まえた情報開示に取り組んでいます。

TNFD一般要件

TNFDの開示提言に基づく一般要件の内容について、以下に記載します。

マテリアリティの適用

自然に関連するリスク・機会の評価では、全社的リスクマネジメントやTCFD開示との整合性からシングルマテリアリティアプローチを採用し、自然資本が事業に与える影響について評価を行っています。

開示の範囲

今回の開示では、当社グループの主要事業である香料事業(フレーバー及びフレグランスの製造・販売)を分析対象としました。また、香料の製造では石油由来品を含む多岐にわたる原材料を使用していますが、バリューチェーン上流の分析では自然資本への依存・影響が比較的大きい植物由来原材料のうち、バニラ、コーヒー、レモン等の主要なものを選定して分析対象としました。

開示の範囲
自然関連課題がある地域

分析の対象範囲に該当する原材料の生産地や調達先拠点、当社グループ拠点について、位置情報の特定を行い、TNFDの示す優先地域に該当するか評価を行いました。なお、現段階で位置情報が確認できなかった拠点については、公開情報等を参考におおよその位置・範囲を推定しています。また、物流及びバリューチェーン下流については情報入手の難易度から現段階では場所の特定を行っていません。

他のサステナビリティ関連開示との統合

気候変動と生物多様性に関連するリスク・機会は、本開示の中で統合的に整理しています。

考慮する対象期間

リスク・機会の評価に用いる時間軸として、短期(2024年)、中期(2030年)、長期(2050年)を設定しています。

先住民族、地域社会と影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント

当社グループでは「長谷川香料グループ調達方針」に基づき、サプライヤーアセスメント等を通じたステークホルダー・エンゲージメントを実施しています。また、一部の原材料については海外の生産地に足を運び、生産者やサプライヤーとの直接的なコミュニケーションを行っています。

ガバナンス・リスク管理

ガバナンス

気候変動及び自然関連のリスク・機会は、当社グループのサステナビリティ推進体制の中で管理しています。気候変動や生物多様性をはじめとする当社のサステナビリティに関する責任者は代表取締役会長(CEO)です。詳細は「サステナビリティ推進体制」をご確認ください。

リスクマネジメント体制

当社グループでは、リスクの分析・管理、対応策の検討を行うためのグループ横断的な組織として、代表取締役会長(CEO)を委員長としたリスク管理委員会を設置しています。当社グループの事業に影響を与える気候変動及び自然関連のリスク・機会については、TNFDの示すLEAPアプローチに基づく分析により、特定と評価を行っています。特定・評価した気候変動及び自然関連のリスク・機会について、その他のリスクと同様に、リスク管理委員会に報告を行っています。
詳細は「リスクマネジメント」をご確認ください。

自然と関連するステークホルダー・エンゲージメント

TNFDの開示提言において求められる、自然関連の依存、影響、リスク、機会の評価と管理に関連する人権方針とエンゲージメント活動について、当社グループでは「長谷川香料グループ調達方針」に基づき、サプライヤーに対して人権への配慮を求めており、また、サプライヤーアセスメント等を通じたステークホルダー・エンゲージメントを実施しています。加えて、一部の原材料については、海外の生産地に足を運び、生産者やサプライヤーとの直接的なコミュニケーションも行っています。

戦略

シナリオ分析・LEAP分析

当社グループでは、これまで実施してきたTCFDに基づく気候変動リスク分析に、TNFDに基づく自然関連リスク分析の内容を加え、統合的に情報開示を行っています。分析においては、気候変動の要素がTNFD開示提言の対象範囲に包含されることから、TNFDの示すLEAPアプローチに沿って、シナリオを踏まえ、分析を行っています。

Locate:自然との接点の発見

原材料の生産地や調達先拠点、当社グループ拠点の位置を特定・推定し、当社グループの事業に関連する拠点の位置を確認しました。また、確認した拠点についてTNFDのLEAPアプローチに基づく評価を行い、優先的に考慮すべき地域(優先地域)を確認しました。

  • バニラの栽培地であるマダガスカル北東部は生物多様性の重要性が高い地域に所在している
  • 当社グループで使用しているレモンの一部はスペイン及びイタリアで栽培されており、いずれも水ストレス地域に該当する等

Evaluate:依存と影響の診断

事業活動による自然への依存・影響を特定・評価するためのツール「ENCORE」を用いて、バリューチェーンの各工程に関連する依存・影響の内容と大きさを確認し、ヒートマップにまとめました。

依存・影響のヒートマップ

※VH:Very High、H:High、M:Medium、L:Low、VL:Very Low

依存・影響のヒートマップ

Assess:リスクと機会の評価

LocateやEvaluateでの分析結果に基づき、リスク・機会の特定と当社グループに与える影響の評価を行いました。物理リスクについては気候変動が進行するシナリオ(4℃シナリオ)に加え、自然資本が損失して生態系サービスが減少する状況を想定して評価を行いました。移行リスクについては、脱炭素が実現するシナリオ(1.5℃・2℃未満シナリオ)に加え、自然資本を守る方向性にも社会が変容する状況を想定して評価を行いました。機会についてはTNFDの示す機会のカテゴリに加え、気候変動リスク分析の際に特定した物理機会(4℃シナリオで生じる機会)も考慮して記載しています。

当社グループではこれらのリスク・機会に対し、「創香力」によるイノベーションで事業機会を捉えつつ、リスク管理を徹底することで、豊かな社会づくりへの貢献と、持続的成長の実現を目指します。

主なリスクと機会
主なリスクと機会

総合研究所内でのビオトープ設置

総合研究所の敷地内に在来種を中心とした植栽と池、小川により構成されたビオトープを設置しており、鳥類や両生類、水生昆虫等、周辺の動物の生息場所としても利用されています。

総合研究所の敷地内ビオトープ

総合研究所の敷地内に池と小川で構成されたビオトープを設置しています。

総合研究所の敷地内ビオトープ

鳥類や両生類、水生昆虫など、周辺の動物がビオトープを利用しています。

総合研究所の敷地内ビオトープ

ビオトープ内には在来種を中心とした様々な植物を植栽しています。

上記以外の取り組みの詳細については、「環境マネジメント」「気候変動」「汚染・廃棄物」「水資源」「調達」をご確認ください。

指標・目標

当社グループでは、空間フットプリントや緑地面積等に関する指標を定め、気候変動や生物多様性の問題に取り組んでいます。
詳細は「長谷川香料グループ ESGデータブック(PDF)」をご確認ください。