トップメッセージ

長谷川香料グループが考えるサステナビリティ

基本戦略とカスタマーサクセス

現在、当社グループは、「コアビジネス(調合香料)の拡大に注力」「国内市場における収益の確保」「海外市場における成長」の3つの基本戦略に沿って事業を展開しています。戦略を確実に成果に結びつけるために、経営改革を推進してきました。2022年度は、ウクライナ情勢に端を発した資源価格の上昇や急速な円安の進行による原材料価格の高騰といった厳しい事業環境となったものの、業績は好調に推移し、連結売上高は前期に引き続き過去最高を、連結当期純利益は3期連続で最高益を更新しています。連結売上高に占める海外売上高比率も45.9%に拡大しました。

国内では、ビジネスソリューション本部のもと、営業、研究、マーケティングの連携を強化し、営業活動、提案内容の質向上及び顧客対応のスピードアップを図ってきました。製品開発の効率化、新しい知見獲得のためデータの利活用を一層進めるためのDXプロジェクトを推進するとともに、技術革新に注力し、当社グループ独自の高品質・高付加価値製品の提供を通じたカスタマーサクセスに努めています。

当社グループは、カスタマーサクセスを顧客の企業価値向上への貢献と考えています。そのためには、顧客からの依頼を待つのではなく、顧客の課題や生活者の潜在的なニーズを調査・分析し、香りの技術を活用した最適なソリューションを提供することが不可欠です。原材料価格の高騰や物価上昇の中、私たちの顧客も原料や製造方法の見直しの必要性に直面しており、カスタマーサクセスの視点は一層重要になっていると感じています。多様化・高度化する顧客のニーズに応えるソリューション営業を通じて提案力を向上させ、カスタマーサクセスのさらなる強化を目指していきます。

成長ドライバーと位置付ける海外市場では、今後の成長を確保するために、米国、並びに中国、東南アジアを中心としたアジア地域に経営資源を効率的に投入し、各地域に合った事業戦略を立案・推進しています。米国では2021年度にMISSION社のPMI(買収後統合)が完了し、シナジー効果が出ています。また、新たな生産体制の構築に向け、カリフォルニア州ランチョ・クカモンガにおいて第2工場建設計画を推進しており、一部は2022年6月に稼働を開始しました。中国では営業体制を強化し、地場大手企業・中堅企業や代理店の活用を通じた商圏の拡大を進めています。また、研究機能の強化、業務の効率化を目的に、新研究棟建設プロジェクトを推進しています。東南アジアではマレーシアにおける新工場の建設計画を進めており、同国拠点をハブとした東南アジア戦略の強化を図っています。世界に広がるサプライチェーンを管理し、経営の国際化を一層推進することで、当社グループが創出する価値をグローバルでより多くのステークホルダーに提供してまいります。

サステナブルな社会の構築に向けて

2015年の持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定の採択から7年超が経ち、社会課題の解決に向けた動きが世界で進展しています。自社の成長を追求するだけでなく、従来以上にステークホルダーを重視した持続可能な社会を実現するための取り組みが求められています。

当社グループは2020年、国連グローバル・コンパクトに署名するとともに、私たちが取り組むべきこととして6つのCSR方針を策定しました。2021年には事業戦略と一体となったサステナビリティの取り組みを組織的に推進することを目的としてサステナビリティ委員会を設置しました。また、2022年には気候変動対応のさらなる推進に向けてTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同しています。

当社グループは創業以来、食料不足をはじめとする現代社会が抱える課題解決に寄与するものとして、枯渇する食品原料を代替する香料の開発や健康志向への対応を進めてきました。地球温暖化による異常気象は天然原料の収量や品質に大きな影響を及ぼすだけでなく、気温上昇によりもたらされる顧客ニーズや消費者動向の変化なども想定されます。これらの課題に対応する中で、無限に広がる香りの可能性を引き出し、カスタマーサクセスの実現を可能にするのは、ほかならぬ「人財」です。全ての従業員が品質管理と安全性の確保を第一に、安全・安心な製品の提供に努め、「専門家としての揺るぎない視点」「ニーズに対応していく熱意」「仕事を成し遂げる力」を発揮することで、当社グループは顧客に最適なソリューションを提供し、発展してきました。当社グループが社是とする『技術立社』は、各部門が常に連携し、刺激し合いながら香料を通じて世界へ貢献するという私たちの姿勢を表しています。

当社グループは、香りの技術を最大限に活用して世界が抱える課題を解決し、人々の豊かで健やかな暮らしを実現するサステナブルな社会の構築に貢献してまいります。

深谷事業所板倉工場での事故について

2022年9月15日に当社深谷事業所板倉工場において当社社員1名が死亡し、2名が負傷する重大な事故が発生しました。事故の発生は誠に遺憾であり、亡くなられた社員のご冥福を心よりお祈りいたします。また、ステークホルダーの皆様に多大なるご迷惑、ご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。

当社は事故調査委員会を設置し、事故原因の究明及び再発防止対策の策定を実施いたしました。事故調査委員会における事故原因の調査内容及び再発防止対策の提言につきましては、同年11月11日に「当社社員死亡事故について(事故原因、再発防止対策及び稼働状況)」として公表しております。人的被害を発生させた本事故を真摯に受け止め、このような事故を二度と起こさないように、再発防止対策を確実に実施するとともに、実効性のある管理体制の構築を着実に進めてまいります。

長谷川香料株式会社
代表取締役社長

海野 隆雄