フレーバーフレグランス官能評価/生理応答計測AVV®(香りの見える化)

睡眠時における香り介入は

自律神経活動指標に

影響をもたらす

 香りが睡眠時のヒトに与える影響に着目した研究は多くはありません。その理由としては、睡眠中のデータを取得する場合には、実験協力者の負担や計測コストが大きいこと等が挙げられます。

 このような課題を解決するために、我々は株式会社ナインアワーズ(以下、ナインアワーズ)と中長期的な業務委託契約を締結し、香りと睡眠に関する研究を行っています。ナインアワーズのカプセルホテルを利用する宿泊者を実験対象者とした、数百名規模の睡眠データを短期間に取得できる睡眠解析サービスを利用しました。

 実験協力者は、チェックイン時に実験参加の同意を得た宿泊者とし、チェックアウト後のアンケート調査に回答した全190宿泊分のデータを解析対象としました。香りなしの条件と、ラベンダー精油を用いた条件で得られた宿泊データとの群間での比較を行いました。総睡眠時間をはじめとする眠りに関する指標では統計的に有意な差はありませんでしたが、自律神経機能の活動指標であるトータルパワー(TP)は、香りなし群よりもラベンダー群でその平均値が有意に高くなりました。また、主観評価の結果では、「非常によく眠れた」を選択した実験協力者の割合が、香りなし群よりもラベンダー群で高くなっていたことから、香り介入によって疲労度が回復し、肯定的な睡眠実感につながったものと示唆されました。

 今回は睡眠研究において最も代表的なラベンダーの香りに着目して報告しましたが、香りの種類によって睡眠中の各指標に対して異なる影響を及ぼす可能性も見出しています。今後も得られた知見をフレーバー・フレグランス開発に応用していくことで、睡眠に悩む多くの生活者にとって真に満足できる製品開発に貢献していきます。

 

ナインアワーズHP:https://ninehours.co.jp/


【学会発表】
この研究成果は2025年3月5日~3月7日に開催された第20回日本感性工学会春季大会
(会場:京都工芸繊維大学/京都府)でポスター発表を行いました。