フレーバー香気分析

バターの「油脂感」に

寄与する香気成分を同定

 近年、消費者の健康志向の高まりや、健康増進に関する国の政策を背景に、減塩、減糖、減脂の加工食品のニーズが高まっています。しかしながら、一方で、単純に塩分、砂糖、油脂を減らした加工食品は美味しさの低下に繋がることから、それらの風味を補うことのできる素材が求められています。

 本研究では、「油脂感」を増強・補強できる素材の開発を目的に、バター中の「油脂感」に寄与する香気成分の探索を行いました。5種のバターの香気濃縮物のGC-Oを行ったところ、「油脂様、ウリ様」の新規香気成分として、(E)-9-dodecenoic acidと(Z)-9-dodecenoic acidを見出しました。香料としての実用性が優れていると考えられた(Z)-9-dodecenoic acidをビスケットに添加して感応評価を行ったところ、「油脂感」「バター感」「乳脂感」「塩味」「風味の持続性」「コク」といった多くの評価項目が向上し、さらに嗜好性も高くなることが分かりました。

 以上のことから、(Z)-9-dodecenoic acidは油脂感あるいはコクを増強・補強できる有用な素材であることが明らかとなりました。


【学会発表】

この研究成果は2021年8月26日~28日に開催された日本食品科学工学会第68回大会(オンライン開催)で「バター中の「油脂感」に寄与する香気成分の探索」の題名で口頭発表を行いました。