フレグランス官能評価/生理応答計測AVV®(香りの見える化)

香料のマスキング効果を

評価する手法を開発

~鼻部皮膚温度と表情~

 香料には香りの強化や付与だけでなく、不要不快な「臭い」を別の香りで目立たなくさせる「マスキング」という重要な役割もあります。従来、香料のマスキング効果の検証には、主に官能評価が用いられてきましたが、近年、さらなる客観的評価手法も求められています。そこで、生理応答指標となる鼻部皮膚温度と表情に着目し、マスキング効果の新たな評価手法を開発しました。評価試料には当社で開発した疑似不快臭(疑似尿臭・疑似糞便臭)と各不快臭に対するマスキング香料を用いました。

【鼻部皮膚温度】

 人は不快を感じると交感神経活動が優位になります。それに伴い、血管が収縮、血流量が減少し、結果的に鼻部皮膚温度が低下することが知られています。今回、サーモグラフィを用いて試料を嗅いでいるときの顔面温度をモニタリングしました。その結果、鼻部皮膚温度は、疑似尿臭のみを嗅いだときには低下しますが、そこにマスキング香料を添加すると温度低下が抑えられることが分かりました。

【表情】

 表情と感情は密接な関係にあり、嫌悪や驚きなどの基本感情に関わる表情を人類は普遍的に有しているといわれています。そこで嫌悪時の表情の特徴の一つである眉周辺の筋活動(眉をしかめるような動きに寄与)を表面筋電図によって計測しました。その結果、疑似糞便臭のみを嗅いだときには眉周辺の筋活動が生じますが、そこにマスキング香料を添加するとその筋活動が低減されることが分かりました。

 これら香りを可視化する手法は、顧客や消費者に対して香りを伝えるためのコミュニケーションツールとなることが期待され、製品開発や商品選択に貢献します。

 本技術の詳細は、2019年9月12日(木)に芝浦工業大学 豊洲キャンパスで開催された第21回日本感性工学会大会で発表されました。