フレーバー官能評価/生理応答計測香気分析

乳化香料の

香味発現性を見える化

乳化香料の香味は中盤~後半に強く発現し、持続性があることが知られています。今回、水晶振動子マイクロバランス(QCM)を用い、口腔内の細胞膜を模した疑似生体膜への乳化香料の吸着を測定することで、今まで感覚的にしか表現できなかった乳化香料の香味発現性を可視化することに成功しました。

香料物質の多くは油溶性成分であり、清涼飲料水などの水系の製品に使用するためには、油溶性の香料成分を水溶性に製剤化する必要があります。水溶性製剤化した香料の代表的なものに、エッセンス(水溶性香料)と乳化香料がありますが、エッセンスと乳化香料では香味の発現性が異なり、エッセンスの香味は前半に強く発現するのに対し、乳化香料は中盤~後半に強く発現し持続することが知られています。今回、この香味発現性の違いを可視化するため、官能評価手法を用いた香味発現性の『見える化』、水晶振動子マイクロバランス(QCM)を用いた香味発現性の『見える化』を検討しました。

この研究成果は2017年8月28日~30日に開催された日本食品科学工学会 第64回大会(会場:日本大学湘南藤沢キャンパス/神奈川)にて口頭発表およびポスター発表を行いました。若手の会におけるポスター発表では、優秀賞を受賞しました。本研究は、横浜国立大学との共同で行いました。なお、本件は日本清涼飲料研究会第27回研究発表会(2017年10月17日、会場:日本教育会館/東京)においても口頭発表を行っております。

官能評価手法を用いた香味発現性の『見える化』検討では、同じレモン精油から調製したエッセンスと乳化香料を簡易飲料基剤に同力価で賦香し、TI法(Time Intensity法:時間強度曲線法)による官能評価を行い、エッセンスと乳化香料の香味発現の見える化に成功しました。

図1.TI法の評価結果

また、乳化香料の香味が持続するのは、口腔内の細胞膜に吸着するためではないかとの仮説を立て、水晶振動子マイクロバランス(QCM)を用い、疑似生体膜へのエッセンスおよび乳化香料の吸着量を測定しました。エッセンスは疑似生体膜にほとんど吸着しないのに対し、乳化香料は疑似生体膜に吸着しやすいことがわかりました。このことから、乳化香料は口腔内の細胞膜に吸着するため香味が持続するという仮説を肯定する結果となりました。また、これは官能評価の結果とも同様の傾向を示す結果となりました。

今回、官能評価法およびQCMを用い、今まで感覚的にしか表現できなかった乳化香料の香味発現性の見える化に成功しました。本評価方法を用いることで、香味発現のコントロールが可能となり、飲料を含む各種食品の製品開発に大きく貢献できると考えています。

【発表学会】 日本食品科学工学会 第64回大会(神奈川)2017年
【発表タイトル】 QCMを用いた乳化香料の香味発現評価方法について
【発表者】 関隼斗1、酒井貴博2、吉田祥吾2 、松本知奈2 、川村出1
1横浜国立大学 2長谷川香料株式会社総合研究所

 

【発表学会】 日本清涼飲料研究会第27回研究発表会(東京)2017年
【発表タイトル】 乳化香料の香味発現見える化検討
【発表者】 酒井貴博1、関隼斗2、吉田祥吾1、明賀博樹1、松本知奈1、川村出2
1長谷川香料株式会社総合研究所 2横浜国立大学