フレーバー官能評価/生理応答計測香気分析

すりおろしショウガより

見出した新規化合物

すりおろしショウガより有用な新規化合物を見出し、調合に応用することで従来技術よりも優れた香気の再現に成功しました。その効果は官能評価により確認されました。

食品香料の開発において天然物の詳細分析を行い、香気を再現するのに必要な鍵化合物を特定することは極めて重要です。有用な香気成分を天然に求める研究は長らく行われていますが、いまだに天然には未知化合物が数多く存在します。その中から香料として有用な新規化合物を見出すことができれば技術革新につながります。そのような観点のもとで様々な研究を進めていますが、(E)-3-methyl-4-dodecenoic acidという新規化合物をすりおろしショウガより発見することができました。

この研究成果は2017年8月28日~30日に開催された日本食品科学工学会第64回大会(会場:日本大学藤沢キャンパス/神奈川)及び同9月9日~11日に開催された第61回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会(会場:金沢工業大学/石川)で発表しました。

高知県産中生姜をすりおろして得た香気濃縮物を用いて詳細分析を行い、得られた様々な情報から「オレンジ、ピーリー」といった香気特徴を持つ不明成分の構造解析を進めました。その構造を(E)-3-methyl-4-dodecenoic acidと推定し、標品合成を行い各種物性の比較を行ったところ香気やGC保持時間などのさまざまな物性が良い一致を示したため、不明成分の構造決定に至りました。このように見出された(E)-3-methyl-4-dodecenoic acidは新規化合物であり、その香料としての特性を明らかにするために官能評価を行いました。

Fig.1 官能評価結果(t-test, n = 17, ※; p<0.05, ※※; p<0.01)

簡易的に再現したショウガフレーバーにこの新規化合物を添加して評価したところ、薬味感や繊維感といった特徴をはじめ、フレッシュなシトラス感やその持続性も増強させる極めて有用な効果が明らかになりました。

このように有用な新規化合物の発見により、従来技術よりも格段に進歩した高品質な、より天然感にあふれたすりおろしショウガフレーバーの開発が可能になりました。現在は他の様々な香調へこの新規化合物を応用していく研究を進めています。

【発表学会】 日本食品科学工学会 第64回大会(神奈川)2017年
【発表タイトル】 すりおろし生姜のシトラス調香気の探索と新規カルボン酸の有用性評価
【発表者】 田中尚子、増田唯、川口賢二、冨田健介、前田知子、中村哲也、斉藤司
長谷川香料株式会社 総合研究所

 

【発表学会】 第61回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会(石川)2017年
【発表タイトル】 ショウガの重要香気成分の同定
【発表者】 増田唯、田中尚子、川口賢二
長谷川香料株式会社 総合研究所