フレーバーフレグランス官能評価/生理応答計測香気分析

ビターオレンジフラワー精油の香気特徴に寄与する成分を解明

 ビターオレンジは、3~5月には「濃厚な甘さにフレッシュなフローラル調」と表現される香り豊かな白い花を咲かせ、精油の原料となっています。ビターオレンジの花から抽出される精油は、製法の違いで2種類あり、溶媒抽出法ではOrange flower absolute、水蒸気蒸留法ではNeroli oilと呼ばれます。どちらの精油もお菓子、酒類の風味付けや香水、アロマテラピーにも利用されており、重要な香料素材となっています。 それぞれの精油は香りの特徴が大きく異なるものの、香気に寄与する成分については明らかになっていませんでした。そこで本研究では、 2種類のオレンジフラワー精油を対象として、香気の違いについて調べました。

 各精油の官能評価の結果から、Orange flower absoluteは「後に残る濃厚な甘さやスモーク感」が特徴であり、Neroli oilでは「軽い柑橘感やハーブ感」が特徴として挙げられました。次に、香気貢献度の高い成分を絞り込むためAroma Extract Dilution Analysis法を実施し、各精油の重要香気成分を比較しました。その結果、Orange flower absoluteの「濃厚な甘さ」には、バニラ様のvanillin、ハチミツ様のphenylacetic acid、「スモーク感」には煙様の5-vinylguaiacol、薬様のguaiacolが寄与しており、Neroli oilの「柑橘感」には、シトラス様のgeranyl acetate、「ハーブ感」には樹木様のα-pinene、メタリックな(E)-ocimeneが寄与していることが明らかになりました。

 さらに生花と比較することにより、オレンジフラワーの香りの骨格に重要な成分や生花に特徴的な香気成分も解明することができました。


この研究成果は2023年10月28日~30日に開催された第67回 香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会(会場:千葉大学/千葉県)にて「ビターオレンジ (Citrus aurantium) フラワー精油の重要香気成分に関する研究」の題目で口頭発表を行い、ベストプレゼンテーション賞に選出されました。