フレーバー官能評価/生理応答計測香気分析

Dehydrorose oxide

の光学異性体に関する

研究

ダージリン紅茶は特有のマスカット香を有していることが知られており、dehydrorose oxide〔4-methylene-2-(2-methylprop-1-enyl)oxane、以下DHRO〕は、当社が初めてダージリン紅茶中から見出した、マスカット香に寄与する重要な香気成分です。

 DHROは分子中に不斉炭素を持つため、2つのエナンチオマーが存在します。それぞれのエナンチオマーについては、合成品としていくつか報告例がありますが、それぞれの香気については詳細な記述がなく、香気成分としての研究はあまり行われていません。そのため、両エナンチオマーの香気特性の違いを明らかにし、天然物中の光学異性体の存在比を測定し、紅茶モデル基材への添加効果を評価することを目的として研究を行いました。

 多糖誘導体型キラルカラムを使用したHPLCによって光学分割されたDHROの両エナンチオマーは、(R)体がgreen、metallic、oilyな香気を持つのに対して、(S)体はjuicy Muscat-likeな香気を有していることが判明しました。2次元GC分析により、紅茶中ではDHROはラセミ体として存在していることが明らかになりました。また、DHROの紅茶モデル基材に対する添加効果を検証し、(R)体は茶葉感を向上させる効果がある一方、(S)体は紅茶のマスカット香を増強させる効果がありました。 

 これらの結果から、紅茶で感じられるマスカット様香気は(S)体の寄与度が高く、フレーバークリエーションにおいて、特に(S)-DHROの使用は、嗜好性を向上させるのに有用となると考えられます。

この研究成果は2021年5月4~6日に開催された16th Weurman Flavour Research Symposium(会場:オンライン開催)でポスター発表を行いました。

図1 dehydrorose oxideの両エナンチオマー