官能評価/生理応答計測

産地別・焙煎度別

コーヒー豆風味特徴の把握

コーヒーは世界各地で飲まれている嗜好飲料であり、豆の産地、品種、焙煎度等によって風味に様々なバリエーションがあることも大きな魅力です。一方で、これらの要素がそれぞれコーヒーの風味にどのような影響を与えるのかを把握することは、特徴的なコーヒー香料の開発において重要と考えられます。そこで、産地と焙煎度の組み合わせがコーヒーの風味に与える影響を、官能評価を用いて調査しました。 代表的な 4 つの産地と、幅広い焙煎度を組み合わせた全 20 種類のコーヒーについて、専門パネルによる風味評価を行った結果、コーヒーの風味には焙煎度が大きな影響を与えることが分かりました。産地が異なっても、焙煎によって共通の風味変化が見られる一方で、各産地によって特徴的な風味があることも確認でき、中焙煎において最も産地の違いが明確であることがわかりました。 コーヒーの体系的な風味評価としては各種フレーバーホイールが存在しますが、今回は特徴的なコーヒーフレーバーの開発という視点でフレーバリストの特徴を捉える能力を積極的に活用して得られた結果です。代表的な産地、焙煎度のコーヒーの複雑な香気の違いをマッピングという形で体系的に可視化したもので、当社のコーヒーフレーバーの開発に有効活用されています。

この研究成果は 2017 年 11 月 28 日に開催された日本官能評価学会 2017 年度大会(会場:大妻女子大千代田キャンパス/東京)でポスター発表を行いました。

アラビカ種のブラジル、ガテマラ、コロンビア、エチオピア産地のコーヒー豆について、L 値 24、22、20、18、15 の焙煎度の豆から抽出したブラックコーヒー計 20 品を、記述分析法により官能評価しました。当社フレーバリスト及びフードケミスト 17 名を評価者とした専門パネルを用い、風味特徴の言葉だし、意味の摺合せにより 28 用語を評価用語としました。本評価は試料を 3 桁コード化してランダム呈示し、各特徴の強さを評価しました。評価は 2 回の繰り返しを行い、結果について統計処理を行いました。

主成分分析による解析を行った結果、横軸を焙煎度、縦軸を産地とするマッピングが得られました。いずれの産地豆においても、低焙煎から高焙煎になるにつれて L 値の順に体系的な風味変化が起こっていました。一方で、産地間の差は L 値 20、18 でよく表れており、ブラジルはナッティーな香り、ガテマラ・コロンビアは酸っぱい香り、エチオピアはフローラルな香りにそれぞれ特徴が見られました。

【発表学会】 日本官能評価学会 2017 年度大会(東京)2017 年
【発表タイトル】 コーヒー豆の産地焙煎度違いによる風味差の体系的な把握
【発表者】 藤木文乃 1、服部奈津 1、中村哲也 1、斉藤司 1
1長谷川香料株式会社 総合研究所