基礎研究部門
常に新しいことに
チャレンジしながら
未知の香りを見つけ出す
T.O.
T.O.
大学では、植物の生理活性物質を研究していました。香りと直接関係のある研究ではありませんでしたが、有機化合物を抽出したり、その性質を分析するという点では今の業務内容に近いのではないかと思います。
香料会社の存在を知ったのは就職活動を始めてからで、大学の研究室の先輩も当社にはいなかったのですが、会社説明会などで香料製品や業務の話を聞くにつれ、大学で研究していた科学的な知識や技術が活かせるだろうと考えました。何より大きな動機となったのは、食品や日用品など生活に密接に関わる多くの商品に香料が使われていることを知り、当初志望していた食品会社より、やりたいことがもっとたくさんできるのではないかと考えたからです。目にこそ見えないけれど、様々なかたちで人々の生活を豊かにしている「香り」に関われることは、とても魅力的でした。
会社説明会などでは先輩社員の皆さんに親切に対応していただき、社風の良さも感じられました。未知の業界でしたが、不安はありませんでした。
香水、ヘアケア製品、スキンケア製品、ハウスホールド製品などに使用されるフレグランス(香粧品香料)を開発するための香気分析を行っています。
業務の一例を挙げると、パフューマー(調香師)から製品や花などの香気分析の依頼を受け、それをガスクロマトグラフなどの装置で分析し、それぞれの香気成分の構成をまとめた成分表を作成します。その成分表を参考にパフューマーが香気成分を調合して花などの香りを再現したり新たな香りをつくり出したりするのですが、分析表どおりの調合ではつくり出せない香りもあります。こうした場合は、パフューマーを交え、香気成分の中でまだ分析できていない重要な成分がないか、各香料成分の分量が正しいか…などの検証を重ねていきながら、香りを創り上げていきます。
例えば、ある花の香りとひと口に言っても数百種類の香気成分で構成されており、それぞれの成分がどういう名前でどんな特徴を持っているのか覚えていくのは大変であり、これは経験値を増やして蓄積していくしかありません。こうした知識が増えていくと分析の精度も上がり、より正確な分析ができるようになりますが、当初は自分で調べたほか、先輩社員にもたくさん教わりました。
不明な点はすぐに先輩社員に教えてもらえますし、困ったことがあれば自然と助け合って問題を解決できる、とてもコミュニケーションが取りやすい職場環境です。
形や色が見えない香りは、たとえ同じ香気成分であっても、人によって感じ方がまったく異なる場合があります。自分にとっては良い香りでも、パフューマーやお客さまがそれぞれ異なる感じ方をしているような場合は、まとまった結論がなかなか出ないこともありますが、苦労して検討と分析を重ね、お互いの結論が一致したときの達成感は格別です。
また、分析機器や分析技術は日々進歩しているので、それに合わせて自分の知識と技術もアップデートしていかなくてはなりません。新しいことを覚えることは簡単ではありませんが、従来の方法では分析できなかった香りを発見できる可能性が高まり、実際にいくつかの新たな香気成分を見つけることができました。新しい発見をするためには、常に新しい技術や情報に興味を持って、自分なりに改善や創意工夫をしながらどんどんチャレンジしていくことが大切だと思います。もちろん、独りよがりに陥ることがないよう、先輩社員や関係部署に相談することも常に心がけています。
分析を重ねた末に、これまで知られていなかった香気成分を発見できたときは、大変嬉しく、達成感があります。また、依頼された仕事だけでなく、自分でも新しい香りを見つけようと、休日にプライベートでバラ園に行くこともあり、常に分析の対象となる花などの植物を探しています。研究所内には私たち研究員が世話をしている庭園があるのですが、そこに先日見つけて購入したバラを植え、自分で世話をしています。そうやって育てたバラから新しい香りが発見できたら本当に楽しいと思います。
もちろん、自ら分析に関わった香料を用いた商品が店頭に並んでいるのを見るときにも、大きな喜びを感じます。自分が関わった商品が多くの人の手に渡り、豊かな生活を送るために役立っているということは、香料会社ならではのやりがいだと思います。