フレグランス官能評価/生理応答計測

香り表現における色の活用

-明度が高い色が選択される香水は好まれる-

我々は香りを「色」で表現する手法としてAroma Rainbow®を開発しました。このAroma Rainbow®では嗅いだ香りのイメージに一致する色を選択します。本研究では評価者が選択する色の明度と評価者の香りに対する嗜好に強い相関があることを見出しました。

我々は香りを色で表現する手法であるAroma Rainbow®を開発しました。本手法では評価者が香りを嗅いで、その香りのイメージに一致すると考える色を選択します。今回、評価者が選択した色の明度に着目したところ、嗜好性の高い香水ほど、明度の高い色が選択される傾向を見出しました。

この結果から、香りのイメージから選択された色は香りの特徴を表現するだけではなく、評価者の香りに対する嗜好をも反映することが明らかとなりました。したがって、Aroma Rainbow®は評価者のイメージや嗜好を反映した「香りに対する気持ち」を表現するツールとしても有用であると考えられます。

目に見える色は言語のような国や文化による違いがありません。この「色」を用いた香りの表現を可能とするAroma Rainbow®は、各国・地域の感性の基づいた商品設計を容易にすることが期待できます。

この研究成果は2017年11月26日に開催された日本官能評価学会 2017年大会(会場:大妻女子大学千代田キャンパス/東京)で発表しました。

5種類の市販香水を提示し、Aroma Rainbow®(香りのイメージに一致する色の選択)と嗜好調査を評価者14名に実施しました。

回答結果の集計から嗜好性の高い香水から順番に選択された色の情報を棒グラフで図示したところ、嗜好性の高い香水ほど、明度の高い色が選択される強い相関が認められました(相関係数:0.98)。

この「嗜好性の高い香水ほど、明度の高い色が選択される傾向」は韓国人女性(20~30代)でも認められました。したがって、香りの評価においてAroma Rainbow®を実施することにより、選択された色から潜在的な香りの嗜好性を推定できる可能性が強く示唆されました。

日本人だけではなく、韓国人女性においても選択された色の明度と嗜好に相関が認められたことから、Aroma Rainbow®を利用することで、各国・地域の感性に基づいた「香り」の調香が容易となり、より嗜好性の高い商品開発をサポートできると考えています。

【発表学会】 日本官能評価学会 2017年大会(東京)2017年
【発表タイトル】 色彩を用いた香り表現の検討
~香りイメージの共有ツール【Aroma Rainbow®】の活用~
【発表者】

野尻健介、中村充志、藤木文乃、中村明朗、中村哲也、斉藤司 

長谷川香料株式会社 総合研究所