官能評価/生理応答計測

快・不快なにおいに対する

顔面生理応答の変化

快・不快の嗅刺激に対する生体反応を調べたところ、特に不快なにおいに対して、顔面皮膚血流量が増加し、前頭前野酸素化ヘモグロビン濃度は顔面皮膚血流量の経時変化と対応して増加することを示す試験結果を得ました。

先行研究において、視聴覚刺激に対する主観的快度が高いほど顔面皮膚血流量は減少することから、顔面皮膚血流量は情動変化の客観的指標になることが示唆されています1)。嗅覚刺激に対しても、情動変化による影響を解析しました。心拍数、動脈血圧、手背皮膚血流量は変化しませんでしたが、顔面皮膚血流量および前頭前野酸素化ヘモグロビン濃度変化は嗅刺激に伴う不快な感情に対して増加しました。前頭葉ヘモグロビン動態は嗅刺激に伴う情動変化を反映する可能性があります。

この研究成果は2017年9月25日~27日に開催された日本味と匂学会第51回大会(会場:神戸国際会議場/兵庫)で発表しました。本研究は、広島大学と長谷川香料の共同で行いました。なお、本件は第95回日本生理学会大会(2018年3月28日~30日、会場:サンポートホール高松・高松シンボルタワー/香川)にてポスター発表も行っています。

情動変化が顔面皮膚血流量および局所脳血流変化に与える影響について、レーザー血流計および近赤外分光計を用いて快・不快の嗅刺激に対する反応を調べました。快の嗅刺激としてピーチ、不快の嗅刺激として酪酸を使用し、嗅刺激に対する顔面皮膚血流量変化を計測し、その際の心拍数、動脈血圧、手背皮膚血流量および前頭前野酸素化ヘモグロビン濃度との関係を明らかにしました。不快臭に対して心拍数、動脈血圧、手背皮膚血流量は変化しませんでしたが、顔面皮膚血流量および前頭前野酸素化ヘモグロビンは明らかに増加しました。前頭前野酸素化ヘモグロビン濃度は顔面皮膚血流量の経時変化と対応する傾向を示しました。一方、快臭に対して顔面皮膚血流量と前頭前野酸素化ヘモグロビン濃度動態は変化しませんでした。

【発表学会】 日本味と匂学会第51回大会(神戸)2017年
【発表タイトル】 嗅覚刺激による快・不快の情動変化が顔面皮膚血流および前頭葉ヘモグロビン動態に与える影響
【発表者】 遠藤加菜1、吉川美穂1、松川寛二1、中村明朗2、中村哲也2
1広島大学大学院医歯薬保健学研究科生理機能情報科学 2長谷川香料株式会社総合研究所
【参考文献】 日本味と匂学会誌, 第51回大会Proceeding集S117-S118
1) Matsukawa K, Endo K, Ishii K, Ito M, Liang N. Facial skin blood flow responses during exposures to emotionally changed movies. J Physiol Sci 6(2018)8, 175-190 (2018).