フレーバー

乳化香料に及ぼす

エタノール添加の影響

油溶性の香料が分散したO/W型エマルションである乳化香料の各種エタノール濃度での分散状態、乳化状態について評価し、エタノールの添加が及ぼす影響について検討を行いました。

乳化香料は様々な飲食品で使用されていますが、最終製品や製造工程の中でアルコールが存在する場合があり、アルコール濃度が高い状態は乳化香料にとっては過酷な環境になります。高アルコール濃度中でも安定性に優れた乳化香料を調製するための指針を得ることを目的として、エタノール濃度を変化させた時の香料のエマルションを調製し、各濃度での乳化状態などを評価してエタノールが及ぼす影響を検討しました。

この研究成果は2017年9月11日~13日に開催された第56回日本油化学会年会(会場:東京理科大学神楽坂キャンパス/東京)にてポスター発表を行い、ポスター賞を受賞しました。本研究は、東京理科大学と共同で行いました。なお、本件は第7回 CSJ化学フェスタ2017(2017年10月17日~19日、東京)においてもポスター発表を行っております。

油溶性香料にはリモネンを、乳化剤にはデカグリセリンモノステアレート(以下、DGMS)を用い、各種エタノール濃度でのエマルションを調製しました。エタノール濃度が35 wt%まではエタノール濃度の増加に伴い濁度が減少し、40 wt%以上では再び濁度が上昇しました(図1)。最も透明性の高いエマルションが得られたエタノール35 wt%において動的光散乱により平均粒子径を測定した結果、約30 nmであることが確認され、このエマルションは一ヶ月間、濁度及び粒子径の変化が無く、高い安定性を示しました。

エタノール濃度35%までは界面張力低下の寄与が大きく反映されてエマルションが微細化され、エタノール濃度35%以上になるとDGMS吸着量減少の寄与が大きくなり、界面膜強度が低下して合一が促進していると考えられます。

以上の事からエタノール濃度によってエマルションの安定性に寄与する作用が変化し、適切な量ではエマルションが効果的に安定化されることが分かりました。

今後、香料の種類や組成を変えてさらに検討することで、高アルコール濃度中でも安定性に優れた乳化香料を調製するための指針を得ることができると考えています。

【発表学会】 第56回日本油化学会年会(東京)2017年
【発表タイトル】 Influence of Ethanol Addition on Dispersion Stability of O/W Type Emulsion Stabilized by Polyglycerol Fatty Acid Ester
【発表者】 勝海由華1、笹倉寛生2、赤松允顕1、酒井秀樹1
1東京理科大学 2長谷川香料株式会社総合研究所

 

【発表学会】 第7回CSJ化学フェスタ2017(東京)2017年
【発表タイトル】 O/W型エマルションの分散安定性に及ぼすエタノール添加の影響
【発表者】 勝海由華1、笹倉寛生2、赤松允顕1、酒井秀樹1
1東京理科大学 2長谷川香料株式会社総合研究所