フレーバー香気分析

アルフォンソマンゴー中の

新規重要香気成分の

構造決定

アルフォンソマンゴーの香気を研究し、最も高いFD値を示す化合物の中に、新規重要香気成分を見出しました。同成分の構造を明らかにすべく、ocimeneを酸化することで同成分を生成させ、単離・構造推定を行い、実際にその化合物を合成することにより構造決定することに成功しました。

マンゴーはインド及びインドシナ半島原産の常緑大高木のウルシ科植物であり、甘く柔らかい果肉とトロピカルな香りを特徴とする果物です。その中でもアルフォンソマンゴーは味、香りともに最高級と言われていますが、香気分析が行われた報告は多くありません。そこで当社ではその特徴的な香気再現のために、アルフォンソマンゴー中に含まれる重要香気成分の探索を行いました。

この研究成果は2017年9月9日~11日に開催された第61回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会(会場:金沢工業大学/石川)で発表しました。

重要香気成分の探索及び不明成分の同定検討

アルフォンソマンゴーの香気濃縮物に対しAroma Extract Dilution Analysis(AEDA) を行ったところ、最も高いFD値を有する成分の中にパイナップルの繊維質を想起させるgalbanum様の香気を有する不明成分が見出され、MD-GC分析の結果、成分のマススペクトルを得ることに成功しました(右図)。

不明成分の単離及び構造推定

この不明成分は、長期保存したocimene中に痕跡量含まれることが分かったため、ocimeneの酸化生成物と考えられました。そこでocimeneに対し酸素雰囲気下に光照射することで酸化を行ったところ、同不明成分を生成させることに成功しました。続いて蒸留・HPLC分取等を駆使してこの不明成分を単離し、その構造を(1E,3E)-4-methyl-1-(prop-1-en -2-yloxy)hexa-1,3,5-trieneと推定しました。本化合物はこれまで報告されたことのない新規化合物であったため、実際に合成することにより構造確認を行うことにしました。

不明成分の合成及び構造決定

合成スキームを以下に示します。得られた合成品のGC保持時間及びマススペクトルは、求めているアルフォンソマンゴー中の重要香気成分のものと良い一致を示し、新規重要香気成分の構造決定を達成しました。

【発表学会】 第61回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会(石川)2017年
【発表タイトル】 アルフォンソマンゴーから見出された新規重要香気成分の構造決定
【発表者】 小西俊介、冨田直己、福島祐介、増田唯
長谷川香料株式会社 総合研究所