フレーバーフレグランス官能評価/生理応答計測
香り表現における色の活用 -香りと言葉と色はイメージを共有している-

私たちは日常生活で目に見えない香りの表現を言葉に依存しています。豊かな香り表現を目指し、言葉だけに頼らない香り表現方法を検討する中で「色」を表現の軸に据えたAroma Rainbow®を開発しました。

本手法により香り・風味から表現された「色」と商品色彩設計を調和させることが可能となることが期待できます。

花の香りや食べ物の風味に感動したとき、私たちはどのような手段で他人に伝えるでしょうか。「いい香り」「おいしい」に代表されるように、多くの人は言葉を使うのではないかと思います。香料開発を担う調香師も香り特徴を伝える手段は言葉に頼っていますが、調香師のように言葉による表現を訓練しない大多数の人にとって、目に見えない香りを言葉で表現することは難しいと思われます。そこで我々は色を用いた新たな香りの表現手法であるAroma Rainbow®を開発しました。本手法により香りを色で表現できるだけではなく、香りと言葉と色がイメージを共有していることも確認できました。香りの表現に言葉だけではなく、色という新たな評価軸を加えることで、香りや風味の多面的な評価を可能にすると思われます。この手法の応用により商品の色彩設計に香りや風味の由来のエビデンスを与えることが可能になると考えています。

この研究成果は2017年8月28日~30日に開催された日本食品科学工学会 第64回大会(会場:日本大学湘南藤沢キャンパス/神奈川)で発表しました。なお、本件は第19回日本感性工学会大会(2017年9月11~13日、会場:筑波大学東京キャンパス/東京)にてポスター発表も行っております。

Aroma Rainbow®はイメージを色で表現する手法であり、以下の3点を基本概念としています。

①イメージ(香り、言葉など)に合致する色を色票より選択

②選択した色のイメージに対する寄与の程度の評価

③評価者により選択された色、寄与の程度に基づく色パターンの作成

 

香水の香りやフレーバーをつけた飲料の風味評価をAroma Rainbow®で実施したところ、それぞれ異なる色パターンが得られ、香りや風味の特徴が色に反映されていると考えられました。

次に、私たちが通常、香りの表現に用いている言葉による評価との関係性に着目しました。香水の香りの色パターンとその香りを最も良く表している言葉の色パターンを比較したところ、両者の色パターンの特徴はよく似ていました。この色パターンの類似性は香りと言葉と色はイメージを共有していることを強く示唆しています。つまり香りの表現方法として色が言葉と並ぶ有用な手段となることが期待できます。

【発表学会】日本食品科学工学会 第64回大会(神奈川)2017年
【発表タイトル】色彩を用いた香りイメージの共有手法~Aroma Rainbow™のご紹介~
【発表者】野尻健介、中村明朗、中村哲也、斉藤司 長谷川香料株式会社 総合研究所
【参考文献】日本食品科学工学会 第64回大会講演集 p. 161
第19回日本感性工学会大会 予稿集 P32