フレーバー官能評価/生理応答計測

オレンジ果汁の代替素材としての乳化香料の活用

 食品素材は、昨今の不安定な社会情勢や気候変動による価格の高騰といった調達リスクが存在します。特にオレンジ果汁は近年の天候不順や病害による供給不足により安定供給が難しくなっております。商品の安定的な供給と品質維持のため、オレンジ果汁を配合する清涼飲料水等の食品では、その配合量を抑えた商品設計が検討されておりますが、素材本来が持つ厚みのある風味が低減されることが課題となっております。

 本研究では、オレンジ果汁の成分に着目し、果汁中におけるエマルションの形成に重要な役割を担うペクチンを活用した乳化香料を開発しました。また、口腔内における乳化香料の風味発現やマウスフィールを解析するために、水晶振動子マイクロバランス法(QCM)を用いて、疑似生体膜への成分吸着量を比較しました。その結果、今回開発した乳化香料を果汁10%に添加した飲料は果汁20%飲料に近い成分吸着量を示し、乳化香料が果汁の持つ風味発現やマウスフィールに寄与することを見出しました。さらに、これらの飲料について官能評価を実施したところ、果汁10%に乳化香料を添加した飲料は、果汁20%飲料に近い風味発現を示し、果汁が持つ厚みや飲みごたえを補う事がわかりました。

 これらの結果から、ペクチンを活用した乳化香料を用いることでオレンジ果汁を代替でき、その調達リスクを改善できることが示唆されました。


【学会発表】

この研究成果は2024年8月29日~31日に開催された日本食品科学工学会 第71回大会
(会場:名城大学 天白キャンパス/愛知県)
2024年10月8日に開催された第33回日本清涼飲料研究会
(会場:日本教育会館)で口頭発表を行いました。