フレグランス

NANOLYS®による新奇

リポソームの特性の評価

1. 構造評価

2. 粒径制御技術と特性評価

 リポソームは、肌と同様の脂質成分で構成されている脂質二重層構造のカプセルであり、保湿力の高さや使用感の良さなど、化粧品の機能価値や感性価値を高める数々の利点から応用が進められています。しかし、開発・製造には高い技術が必要なことから、化粧品の中でも高価格帯の商品に採用される一方で、広い価格帯の製品への使用には障壁となっていました。私たちは多価アルコール法という手法を用いて、従来よりもはるかに簡便な工程でリポソームを調製することを可能にしました。

 この手法に用いるプレリポソームをNANOLYS®と名付け、NANOLYS®によるリポソームの特性について検証し、これまでにない様々な利点があることを見いだしました。

 

1. 構造評価

従来のリポソームの工業的な製造には高圧乳化機による処理が必要とされており、その構造は多層状(マルチラメラ)であることが一般的とされてきました。本研究では多価アルコール法を用いることで、特殊な製造装置を用いることなくリポソームを形成することを確認しました。透過型電子顕微鏡による観察から、このリポソームは単層の膜(シングルラメラ)をもつ、粒径100 nm以下の微細な構造であることがわかりました。粒径については動的光散乱法を用いた結果とも高い相関を示しました。さらに、各種濃度でのリポソーム水溶液について構造評価を行いました。今回の検討により、これまでのリポソームにはない新たな特性が見出されたと考えます。

 

2. 粒径制御技術と特性評価

リポソームを用いた化粧品の使用感とリポソームの粒径との関係性については、未だ明らかになっていません。その関係性を明らかにするにあたり、従来のリポソームの粒径制御では補助界面活性剤の併用が必要とされることから、使用感への影響が考えられます。本研究では多価アルコール法のプロセスを精査し、同一組成でのサイズ制御リポソームの調製を試み、それらの性状について検証を行いました。

その結果、本法では乳化機や補助界面活性剤を使用することなく、粒径100 nm未満~300 nm台までの範囲で粒径制御したリポソーム水溶液が調製可能であることを確認しました。粘度は粒径が大きいほど高くなることから、粒径違いでの使用感について評価を行いました。

本研究結果を通じて、微細な粒径領域でのリポソームの特性や、肌との相互作用の詳細をより明らかにしていけるものと考えています。


【学会発表】

1. 構造評価

この研究成果は2022年9月20日~22日に開催された第73回コロイドおよび界面化学討論会(会場:広島大学/広島県)で「小角X線散乱(SAXS)を用いた多価アルコール法リポソームの構造評価」の演題で口頭発表を行いました。本研究は、日光ケミカルズ株式会社と共同で行いました。

2. 粒径制御技術と特性評価

この研究成果は2022年12月2日に開催された第89回SCCJ研究討論会(会場:タワーホール船堀/東京都)で「多価アルコール法を用いたサイズ制御リポソームの調製」の演題で口頭発表を行いました。本研究は、日光ケミカルズ株式会社と共同で行いました。