実生ユズの風味の豊かさに寄与する成分の解明
ユズは種から育てると結実するまで長い年月がかかるため、市場に出回っている多くのユズは接木により栽培されています。一方産地では接木に比べ、種から育てた実生(みしょう)の果実は風味が豊かなことが知られています。本研究では高知県の同じ農園で栽培された実生と接木の果皮の香気成分を比較し、風味の違いに寄与する成分に注目しました。それぞれの果皮を溶媒抽出し調製した果皮油を用いて分析を行いました。その結果、接木に比べて、実生ではトップのエステル類や、ベースノートに寄与する香気が多く検知されました。ベースノートに寄与する香気の探索を行ったところ、香気成分として初めてcis-2-hexylcyclopropaneacetic acid を同定しました。この化合物を既存のユズ香料に添加すると、フローラル、フルーティ、果汁感、果皮感が増強され、黄色く適度に熟したユズらしい風味が強くなることを確認しました。今回の研究により実生の風味が良いといわれる理由の一端を明らかにしました。
【学会発表】
この研究成果は2023年3月14日~17日に開催された日本農芸化学会2023年度大会 (会場:広島大学, 一般講演はオンライン)で「実生柚子の香気分析」の演題で口頭発表を行いました。