フレーバー官能評価/生理応答計測香気分析

唐揚げの「揚げたて感」に

寄与する成分を解明

1.「揚げたて感」に

                      寄与する成分

2.揚げたて唐揚げの

                   経時的香気変化

 唐揚げはテイクアウトやデリバリー需要の高まりもあり、近年市場が拡大しています。しかし、調理から喫食までに時間が空くと、経時的に好ましい香気や食感が失われてしまいます。そのため、おいしさの向上や食品ロスの削減という観点からも「揚げたて感」の持続は重要なテーマです。私たちは、揚げたておよびホットボックスに保管した唐揚げの香気分析を行い、揚げたての唐揚げの香気に重要な成分を特定し、保管中に起こる香気変化について検証しました。

1.「揚げたて感」に寄与する成分

 揚げたておよびホットボックスで保管した唐揚げ香気のGC分析を行った結果、揚げたての唐揚げはホットボックス保管の唐揚げと比較して3-methylbutanalなどの低級アルデヒド類、2-methylpyrazineなどのピラジン類、furfuryl alcoholなどのフラン類の存在量が多いことがわかりました。次に、香気貢献度の高い成分を絞り込むためAroma Extract Dilution Analysisを実施したところ、揚げたての唐揚げの香気には(EE)-2,4-decadienal、maltol、trans-4,5-epoxy-2(E)-decenal、4-hydroxy-2,5-dimethyl-3(2H)-furanone、(E)-2-nonenal等が重要であることが明らかとなりました。これらの分析結果をもとに「揚げたて唐揚げフレーバー」を作成し、唐揚げへの添加効果を官能評価により検証しました。その結果、フレーバーの添加により揚げたての唐揚げに特徴的であった「軽い香ばしい香り」「ジューシー感」「甘さ」「醤油様」の強度が高くなり、ホットボックス保管の唐揚げに特徴的であった「こげ」「油の劣化臭」「ムレ臭」「鶏の臭み」の強度が低減されることが分かりました。

2.揚げたて唐揚げの経時的香気変化

 本研究では、唐揚げをホットボックス保管する際に水分が失われることに着目しました。すなわち、水分と共に香気成分も失われることを見出し、損失水分を回収し分析することにより時間経過による香気変化および「揚げたて感」に寄与する香気成分の解明を試みました。

 GC分析の結果、唐揚げ保温時の損失水分には時間経過と共に(EE)-2,4-decadienal等の不飽和アルデヒド類や2-methylpyrazine等のピラジン類が減少し、hexanal等の直鎖アルデヒド類が増加することが判明しました。また、methional、phenylacetaldehyde、ラクトン類等が損失水分の香気を特徴づける成分、すなわち「揚げたて感」に寄与する成分であることを明らかにしました。官能評価からも、これらの成分を付与することにより、ホットボックス保管した唐揚げの美味しさが向上することが分かりました。

 


【学会発表】

1.「揚げたて感」に寄与する成分

  この研究成果は2021年8月26日~28日に開催された日本食品科学工学会第68回大会(オンライン開催)で

「唐揚げの「揚げたて感」に寄与する香気成分の探索」の演題で口頭発表を行いました。

2.揚げたて唐揚げの経時的香気変化

  この研究成果は2022年3月15日~18日に開催された日本農芸化学会2022年度大会(オンライン開催)で

「揚げたて唐揚げの経時的香気変化に関する研究」の演題で口頭発表を行いました。

1.2.をまとめた研究成果について、2024年9月6日~7日に開催された日本調理科学会 2024年度大会

(鎌倉女子大学/神奈川県)学術講演会 「食卓の香りを支える技術-大学・企業の取り組み-」 において

 発表を行いました。