フレーバー香気分析

キーモン紅茶の

重要香気成分の探索

ダージリンやウバと並び世界三大銘茶の一つであるキーモン紅茶は蘭を想起させる華やかさや甘さ、そして特徴的なスモーキーな香りを有しています。官能評価や香気分析技術を応用し、キーモン紅茶の重要香気成分を解明するため、本研究では製法の異なる2種類のキーモン紅茶の香気分析を行いました。

この研究成果は2017年9月18日~22日に開催されたWeurman Flavour Research Symposium 2017(会場:グラーツ工科大学/オーストリア シュタイアーマルク州)でポスター発表、2018年10月13日~15日に開催された第62回 香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会(会場:長崎大学/長崎県)で口頭発表を行いました。本研究は、ミュンヘン工科大学 との共同で行いました。

2種類のキーモン紅茶は主に揉捻工程が異なり、官能評価で比較すると、揉捻を機械で行うキーモン紅茶は“Smoky”のスコアが高く、揉捻を人の手で行うキーモン紅茶は“Malty”“Metallic”のスコアが高いという結果が得られました。

次にキーモン紅茶の香気に寄与する成分を正確に把握するため、紅茶抽出液より香気を捕集した後、Aroma Extract Dilution Analysis (AEDA) を行い、香気貢献度の高い成分を絞り込みました。そして、絞り込んだ香気貢献度の高い香気成分を同定し、それらの化合物に関してStable Isotope Dilution Assays (SIDA) による定量を行い、定量値とその成分の閾値より算出したOdor Activity Valueをもとにキーモン紅茶の香気に寄与する27個の重要香気成分を明らかにしました。同定した重要香気成分の定量値をもとに再構築液を調製し、淹れたての紅茶と官能評価により比較することで、同定した成分で元の紅茶の香気が再現できているか確認しました。27成分のうち、geraniol、linalool、2-phenylethanolが“Flowery”、4-hydroxy-2,5-dimethyl-3(2H)-furanone、coumarin、(E)-β-damascenoneが“Sweet”、4-vinylphenol、guaiacol、4-vinylguaiacolが ”Smoky” な香気に寄与していることが判明しました。また、機械で揉捻したキーモン紅茶は4-vinylguaiacolが多く、手で揉捻したキーモン紅茶は“Metallic”なtrans-4,5-epoxy-(E)-2-decenal、“Malty”な2-methylbutanalおよび3-methylbutanalが多く含まれており、それらの化合物が官能的に感じた2種類のキーモン紅茶の香気差に寄与していることを解明しました。

【発表学会】 Weurman Flavour Research Symposium 2017(オーストリア)2017年
【発表タイトル】 Characterizaton of the Key Aroma Compounds in Two Types of Keemun Te a
【発表者】 Tetsuya Yoshida1, Johanna Kreissl2, Yoshiko Kurobayashi1, Tsukasa Saito1, Andreas Dunkel3, Thomas Hofmann2,3
1 R&D Center, T. Hasegawa Co., Ltd., 2Leibniz-Institut für Lebensmittel-Systembiologie an der Technischen Universität München, 3 Lehrstuhl für Lebensmittelchemie und molekulare Sensorik, Technischen Universität München.