ユズはミカン科の耐寒性の強い常緑小高木で、果肉は柔軟多汁で多酸です。中国長江の上流が原産とされ、徳島県や高知県が産地として知られております。生果と果汁での出荷がほとんどで、わずかに果皮から溶剤抽出によってオイルが生産されているだけです。
ユズは調理用柑橘として、その爽快な酸味と快い独特の香気で日本人の食生活に親しまれております。食品香料としては調合香料が使用され、また果汁と併用して食品のフレーバーを増強しています。香粧品香料としては調合香料が、主として浴剤用香料として用いられております。
香気の中にはリモネンが多く含まれていますが、リナロールのほか微量のチモール、ペリラアルデヒドなどが重要な成分となっています。また、最近の長谷川香料の研究で、ユズの特徴的な香気に寄与している成分としてユズノン(登録商標)((6Z、8E)-ウンデカ-6、8、10-トリエン-3-オン)が見いだされました。
(update:2008.11.25)
カシスは北ヨーロッパから北アジアの寒冷地に生育するユキノシタ科の潅木です。ストロベリーやブルーベリーなどと同じベリー類の一種で、6月から8月にかけて直径1cmほどの濃い紫色の実をたくさん付けます。ほど良い酸味と香りが特徴のこの実はジュースやジャムの他、リキュールの原料としても使われています。「カシス・オレンジ」や「カシス・ソーダ」などのお馴染みのカクテルに使われているのも「クレーム・ド・カシス」と呼ばれるカシスの実で作ったリキュールです。
また、「キール」という有名なお酒がありますが、これはカシスリキュールと辛口の白ワインを合わせて作ったカクテルです。その昔、フランスはブルゴーニュ地方ディジョン市の「キール」という市長がこの地方の特産品を普及させようと考案したと言われています。ちなみに白ワインをスパークリングワインに替えると「キール・ロワイヤル」、赤ワインに替えると「カーディナル」になります。
日本にカシスが伝わったのは明治時代のことです。北海道や東北地方などの寒い地域を中心に栽培されるようになり、名前もフランス語の「カシス」ではなく「黒スグリ」(または「黒フサスグリ」)という和名で親しまれるようになりました。
今では「カシス」という名前の方が一般的ですが、これはやはりお酒の影響でしょう。
カシスの香りはさまざまなテルペン化合物やエステル類が寄与していますが、最もカシスらしい重いフルーティな匂いには4-メトキシ-2-メチルブタン-2-チオールが関与しています。
(update:2005.8.2)
カリン(Chaenomeles Sinensis Koehne)は中国中東部、上海の南に当たる浙江省(せっこうしょう)原産のバラ科の落葉中木です。春に5弁のピンク色の花をつけ、秋には黄色く熟した卵形の果実をつけます。酸味が大変強く果肉も固いため生食には向きませんが、その芳香は古くから人々に愛され、中国では古来、衣類の香り付けや、香りも楽しめる装飾品として親しまれてきました。
同じバラ科の植物に中央アジア原産の「マルメロ」(Cydonia oblonga Mill.)というカリンに大変良く似た実を付けるものがありしばしば混同されますが、マルメロは果実の表面に綿毛があるのが特徴です。
日本への正確な渡来時期は知られていませんが、平安時代頃ではないかと言われています。木目がマメ科のカリン類に似ていたことから「カリン」と名づけられ、商家や民家では『金は借りん(カリン)』と縁起をかついで庭に植えたと言い伝えられています。
カリンの香りにはフルーティーな匂いのエチルヘキサノエートやエチルオクタノエートなどのエステル類、青葉の匂いのシス-3-ヘキセノール(別名青葉アルコール)、スミレの花のような香りのβ-イオノンなどの香気成分が寄与しています。
カリンに含まれるカリンポリフェノールという成分には風邪の予防や咳を鎮める効果があり、中国では薄切りにして干したものを煎じて、日本では砂糖漬けや果実酒にして、よく用いるようです。
(update:2005.2.2)
ウメはイチゴ、モモ、アンズなどと同じバラ科の落葉中高木で、原産地は中国の四川省と湖北省の山岳地帯です。日本には遣隋使または遣唐使によって熱、下痢、咳などの症状に用いる「烏梅(うばい)」という薬の形で伝えられたと言われています。これは青いウメの実をその名の通りカラスのように真っ黒になるまで燻(いぶ)して乾燥させたもので、今でも漢方薬の原料として使われています。
今では「花」といえば桜ですが、当時はウメのことを指していました。古くから中国の画人や文人たちの間で「最も美しい花」と尊ばれていたウメは中国の文化を理想とする日本の貴族たちにとって「文化や教養を象徴する高貴な花」だったのです。『万葉集』でもたくさんの歌が詠まれており、その数は桜の約3倍にもなります。
ウメの実は渡来当初は果物などと同じ生菓子として食べられていましたが、その効能が明らかになるにつれ長期保存する方法が考え出されていきました。平安時代の書物に「疫病にかかった村上天皇がウメボシと昆布を入れたお茶を飲んで回復した」という話も載っていることから、ウメボシが生まれたのはこの頃ではないかと言われています。
2月を「梅月」や「梅見月」と呼ぶこともあるように、ウメの花の開花は早いところでは2月上旬頃で、この時期になると各地で「梅祭り」が開催され始めます。他の花に先駆けて春一番に咲くことから、ウメの花には「春告草(はるつげぐさ)」という別名もあるそうです。
春を告げるウメの花の甘い香りには、モモ、チェリー、アプリコットなどにも含まれるベンズアルデヒドやオイゲノールなどの香気成分が、ウメの実にはベンズアルデヒドを中心に酢酸エチルなどのエステル類やガンマデカラクトンなどのラクトン類が含まれています。
(update:2004.2.19)
ザクロはペルシャ(イラン)あたりが原産地といわれる、ザクロ科の樹高5〜10メートルの落葉小高木です。7〜8月にかけて濃いオレンジ色の花をつけ、果実は9〜10月に黄赤色に熟します。ザクロは果皮が厚く、果肉はつくらず、種子の周りの外種皮が赤く熟します。外種皮は多汁で甘味と酸味がありますが、特徴的な香りはありません。生食用のほかジュースの原料にされます。グレナデン・シロップはカクテルに重用されます。
根皮や果皮にはペレチェリンと呼ばれるアルカロイドが含まれており、条虫駆除薬としての効果をもっています。
ザクロフレーバーの調香にはメチルフェニルカルビノール、α―イオノン、γ―ウンデカラクトンなどが使われています。
(update:2001.5.25)
チェリーはバラ科サクラ亜属に属する落葉高木の果実で、日本名では“さくらんぼ”と呼ばれています。花の観賞を目的とする種類とは少し異なり、甘果桜桃と呼ばれるセイヨウミザクラと酸果桜桃と呼ばれるスミノミザクラをもととする多数の品種ができていますが、いずれも欧州系のものです。
アメリカ、ドイツ、フランス、日本など世界各地で栽培され、生食のほか、缶詰、天然果汁、チェリーエッセンスとして利用されます。また、種子からはビターアーモンドオイル、チェリーカーネルオイルが得られます。
チェリーフレーバーは、一般的に西洋チェリーがベンズアルデヒドを中心としたパンチのある香りで、国産のものは果肉感のあるみずみずしい香りです。香気成分としてはベンズアルデヒドが特徴的で、ほかでは脂肪酸エステル類、ヘキセノール類、ヘキセナール類が主です。
(update:2001.5.11)
日本名で「あんず」と呼ばれるバラ科の落葉性高木で、中国華北地方の原産です。果実は核果で有毛、みぞがあり、白粉を吹き、成熟すると淡黄色または橙黄色になります。アプリコットの核仁は杏仁と呼ばれ、漢方では鎮咳去痰薬として配合されています。杏仁にはアミグダリン約3%、脂肪油30〜50%が含まれており、圧搾して得られる杏仁油は化粧品の原料となり、しぼりかすを蒸留して得られる杏仁水は鎮咳薬にされます。
果肉の香気成分は、リナロール、ゲラニオール、ネロールなどのアルコール類、ベンズアルデヒド、パラサイメンなどがメイン成分で、他にはγ―ブチロラクトン、γ―デカラクトンなどのラクトン類、エチルラウレート、エチルミリステート、イソブチリックアシッドなどのエステル、酸類も検出されています。
(update:2001.4.27)
ペピーノは果物のニューフェイスとして注目されているナス科の植物の果実です。原産はコロンビア、ペルーなどの温暖なアンデス山地で、南米では「ペピノ」、「メロンペアー」、「メロンシュラップ」という名で広く知られています。ニュージーランドに渡って改良が加えられて今日のペピーノができました。現在約10種の品種があります。種子が少なく、果汁をたっぷり含んだ淡いクリーム色の柔らかな果肉はフレッシュなメロンのような香りと、トロピカルフルーツを淡白にしたような香りを合わせもっています。
ペピーノの主香気成分はメロンと同様、青臭い香りのシス-6-ノネノールです。一方、トロピカル系のフルーティーな香りは、3-メチル-2-ブテニルエステルと3-メチル-3-ブテニルエステルによるものとされています。
(update:2001.4.13)
スイカは、4000年以前から栽培されている長い歴史のあるウリ科の果実です。原産地は諸説がありますが、南アフリカであるとの説が一般的です。日本への伝来は不明点が多いのですが、一説には隠元禅師が中国より持って来たと言われています。
果肉は紅肉と黄肉があり、紅肉種が90%を占めています。この特有の紅色はリコピンとカロチンによります。栽培品種は品種改良が盛んに行われ、その数は非常に多いのが特徴です。近年は著しく甘みが強い品種が好まれています。
果肉部の香気成分はアルデハイド類、アルコール類、ケトン類などで、得にスイカのみずみずしさに寄与している成分はC-9のアルコールおよびアルデハイドで、具体的には3、
6-ノナジエナール、3-ノネナールと言われています。
スイカフレーバーはメロンフレーバーなどに比べ利用範囲が狭いため、一部の冷菓、チューイングガムなどにしか用いられておらず、フレーバーそのものの開発と同時に用途の開発も今後の課題と言えます。
(update:2001.3.30)
ペアーは、バラ科ナシ属に含まれる温帯性果樹で、世界の温帯の広い地域で栽培されています。いわゆるペアーと呼ばれるものは西洋ナシのことで、原産地はヨーロッパ中部や南東部、および小アジアからイラン北部にかけての地帯です。品種改良も盛んに行われており、なかでもバートレットは生食用としても加工用としても優れ、圧倒的に多く栽培されている最も重要な品種です。その他、日本でもなじみの深いラ・フランスやプレコースなどがあります。
果実は日本ナシのサクサクとした歯ざわりとは正反対で、とろけるようにやわらかく、甘みの濃いねっとりとした肉質です。
ペアーは、甘く上品な香り高いフルーツですが、バートレット種から重要香気成分として、エチル及びメチル トランス-2、シス-4-デカジエノエートやその他高級脂肪酸のエステルがいくつか見いだされています。
(update:2001.3.16)
グレープは世界の大多数の国で栽培され、果物類の全生産量の半分に達するといわれています。わが国でも北海道から九州まで全国的に生産されていますが、主な生産地は山梨で、以下山形、長野と続きます。
グレープには生食用、ワイン用それぞれにいろいろな品種があります。
グレープの香りの成分としては、エチル アセテート、メチルアンスラニレートなどのエステル類をはじめ、リナロール、ヘキサノール、フラネオールなどがあげられます。これらの組み合わせにより、巨峰、マスカットなどの特徴のある香りが作り出されます。
(update:2001.3.5)
メロンはウリ科に属する一年生のつる草植物です。種類としては、雨量の少ない地域で発達したネットメロン、カンタロープ、ウインターメロンなどの西洋メロン、インドや中国の比較的湿潤な地方で栽培された東洋系のマクワウリがあります。マスクメロン(Musk Melon)はジャコウ(Musk)にちなんでつけられた名称で、芳香の特に強いネットメロン、カンタロープに与えられたものです。
独特のみずみずしい香りとグリーン香に特徴があり、重要な成分としてはcis-6-ノネナール、3、6-ノナジエン-1-オール、trans-2- cis-6-ノナジエナール、cis-3-ヘキセノールがあげられ、他にも酢酸エステル類、プロピオン酸エステル類、酪酸エステル類などの多種の香気成分が報告されています。
メロンの多くはそのままデザートとして食されていますが、マスクメロンは特に果汁が豊富で甘味が強く好まれています。天然香料としてメロンは商業的に生産されないので、メロンフレーバーは人工的に調合のものが利用されています。
(update:2001.2.19)
モモの原産地は中国華北の陜西省や甘粛省の高原地帯です。日本では古事記の頃に伝来し、当初は食用としての価値はなく主として花を観賞する「花モモ」でした。品種として一般に知られているだけでも23種類に及んでいます。生産量は、年間で約25万トン程度です。その35%が加工用であり、残りの65%が生食用です。
果実の香気成分として確認されている物質は、86成分に達し主にエステル類、ラクトン類、アルデヒド類ですが、未熟の時は、エステル類が多く成熟すると共に、ラクトン類が増加することが知られています。
他の果実に比べ、炭素数6〜10のラクトン類の存在が特徴的です。調合上では、γ-ウンデカラクトンを通常「ピーチアルデヒド」と呼んでいます。その他では、酢酸ヘキシル、酢酸トランス-2-ヘキセニル、ベンツアルデヒド等が比較的多く存在しています。
(update:2001.2.2)
リンゴの原産は中央アジア地方で、起源は古く4000年も前のことです。リンゴがはじめて日本に植えられたのは、文久年間といわれていますが、栽培されたのは明治5年にアメリカより輸入した75品種の苗を翌年北海道に移植してからのことです。
リンゴの香気成分の中心は、新鮮な青さと甘さを演出するヘキサノール、ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナール等の炭素数が6個の化合物です。エチルブチレート、ブチルアセテート、ブチルブチレート等のエステル類は甘さと完熟感を与えます。芳香の強いデリシャス系の品種は、このエステル類の比率が高く、国光や紅玉ではイソブチルアルコール、ブタノール等のアルコール類が多くなっています。また、酸類も甘さとまとまりに重要な役割を占めています。最近の研究ではエストラゴールが芳香にかなり貢献しているという報告もあります。
(update:2001.1.19)
グァバは、熱帯アメリカが原産で、熱帯から亜熱帯の広い範囲で栽培されています。
果実は大きさが4〜10cm程度で、形状から、洋梨形をしたペアーグァバと、球形をしたアップルグァバに大別されます。果肉の色は白色からサーモンレッドまで様々です。生でも食べますが、ゼリーの材料として最良のものと言われています。ビタミンCが豊富で、果肉100g中に200〜400mg、乾燥グァバにすると4g程も含まれています。
主要香気成分としては、シンナミルアセテートなど桂皮酸の誘導体、ヘキサノール、ベンツアルデヒド、リナロールなどで、またフローラルな香りも有していますがこれはβ-イオノンに起因しているものです。トロピカルフルーツとしては含硫化合物をあまり含んでいないのが特徴です。
(update:2000.12.15)
別名「れいし」と呼ばれ、唐の玄宗皇帝の妃・楊貴妃が好んで食したといわれる果物です。果肉は白色透明な柔らかい肉質で、ジューシーで程良い酸味と特有の香りがあります。
原産地は中国南部と言われ、今日では中国の代表的な果物となっています。中国本土では福建省、広東省、四川省などが主産地で、その他、台湾、ベトナム、インド、アメリカのフロリダでも商業的栽培がされています。
ライチの香気成分は、エチルアセテート、イソアミルアルコール、シトロネロール、アセチルメチルカルビノール、酢酸などが主成分となっていて、その他、アルコール類やエステル類、微量の硫黄化合物が相まって、あの独特な香気を有しているものと考えられています。
(update:2000.12.1)
スターフルーツはカタバミ科に属する熱帯性果樹で、主に熱帯・亜熱帯アジアで広く栽培されており、特に台湾、中国、フィリピンではポピュラーな果物として親しまれています。 果実は10cmほどの楕円形で横に切った断面が星型をしており、スターフルーツという名前もこの面白い形状に由来しています。果実の利用は主に生食ですが、シュウ酸味が強いので、慣れないと食べにくいかもしれません。その他の用途としてはゼリーやジャム、塩漬けなどに加工したり、果汁は清涼飲料として用いられています。
スターフルーツの香気成分はアントラニル酸エチル、安息香酸エチル、桂皮酸エチル、N-メチルアントラニル酸エチル、カプロン酸エチル、ノナナールなどが主体で、芳香族エステルの含有率が高いという特徴があります。
(update:2000.11.17)
パパイヤは、チチウリ科に属する多年生草木で、中央および南アメリカが原産地となっていますが、現在では、熱帯、亜熱帯地方で広く栽培されております。
果肉は、熟すと黄〜橙黄色になるものと、淡紅色になるものとがあり、柔軟多汁です。酸味の少ない果物にしては特有の香りがあり、味は意外に複雑です。また果皮には蛋白分解酵素のパパインを含む乳液層があり、この酵素は、缶詰肉、医薬品などに広く利用されています。
パパイヤの香気成分では、リナロールなどのアルコール類が比較的多く、次いでオキサイド類、ラクトン類、カプロン酸などがあげられます。またパパイヤ特有の香りとして、最近では、イソチオチアン酸のエステルが知られています。しかし、フレーバーとして実際組み立てる場合は、かなり癖が強いこともあって、パイナップル、ピーチ、グレープフルーツ等を隠し味として用いることが多いようです。用途としては、果汁入り飲料、冷菓、フルーツヨーグルト、菓子などに用いられています。
(update:2000.11.02)
トロピカルフルーツのひとつであるマンゴーは、熱帯アジア原産のウルシ科の常緑樹で、普通10〜30メートルほどに伸び、枝を大きく張りひろげます。
マンゴーには特有の強い香りがあり、味わいはバナナともアプリコットとも桃ともつかない、甘く柔らかく口中に溶けるおいしさがあります。インドでは四千年以上も前から栽培されています。現在では世界各地で栽培されており、品種も数千種以上あります。果実の色も黄色からオレンジがかった赤と変化に富んでいます。
香気成分としては、アセトイン、ターピネン、酪酸、ラクトン類などがあげられます。
マンゴーは皮をむいて生で食べるほか、パイやタルト、アイスクリーム、ママレード、ゼリー、ピクルス、キャンディ、ムース、それにカレーには欠かせないチャツネといったものに利用されています。
(update:2000.10.20)
キウイフルーツは、別名チャイニーズグズベリー、ヤンタオ、モンキーピーチなどと呼ばれる中国原産の亜熱帯性果物です。この「キウイ」という名前は、ニュージーランドだけに生息している珍鳥「KIWI」に由来しています。
キウイフルーツは、果肉に水分が多く、味も比較的淡白なので、主として生のまま食べる事が多く、そのほか、薄く輪切りにし、カクテルやジュースの添えものとしても利用されています。
香気成分としては、エチル n-ブチレート、エチルベンゾエート、メチルベンゾエート、エチルカプロエートなどのエステル類とトランス-2-ヘキセノール、シス-3-ヘキセノールなどのアルコール類が知られています。また、特異な成分としてベーターダマセノンが少量含まれています。全体として、青い匂いが特徴的な果物です。
(update:2000.10.3)
パッションフルーツは、トケイソウ科トケイソウ属の一種でクダモノトケイなどとも呼ばれております。原産地は、ブラジル南部および温帯の暖かい地方に分布しており、オーストラリアやハワイでは栽培が盛んに行われております。
果実は円形または長円形で、未熟果は緑色ですが成熟するにしたがい紫色から黒紫色に変わります。風味は非常に強い酸味がありますが、香りはすばらしいの一語につきます。
香気成分は、エチルブチレート、エチルカプロエートなどの各種エステル類をはじめエチルベーターメチルチオプロピネート、メチオニルアセテートなどの含硫化合物が非常に重要な成分です。ケトン類のベーターイオノンなども知られております。
用途としては、果実を割ってそのまま食べてもよいが種が多くて食べにくいので、普通はジュースにして飲用されます。この他にジャム、ゼリー、キャンディーの原料、洋酒や菓子の香りづけに用いられ、ビタミンCも含んでおります。
(update:2000.9.14)
バナナは、マレーシアが原産といわれていますが、現在では広く熱帯各地で栽培されています。世界のバナナの生産量の60%は中南米で、残りはアジア各地、アフリカなどで生産されています。日本に初めてバナナが輸入されたのは、明治36年で、昭和38年に輸入自由化が行われるまでは、ほとんどが台湾バナナでした。
バナナ特有の甘い果実様を与える香気成分としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸などのアミルエステルがあげられます。また、微量でも、完熟感を与える特徴的香気成分として、オイゲノール、オイゲノールメチルエーテル、エレミシンなどのフェノールエーテル類があげられます。
(update:2000.9.4)
パイナップルの原産地は熱帯アメリカ(中米及びブラジル北部)を中心とする地方で、日本には1845年にオランダ船によってもたらされました。ハワイでは1500年代に難破船の積荷のパイナップルが海辺に打ち上げられ、住民によって栽培されるようになったといわれています。
非常に特徴のあるジューシーな風味で、いかにも南国産といったよい香りがします。香気成分としてはカプロン酸のメチル、エチルエステルが非常に多く、含硫化合物としては、3-メチルチオプロピオン酸メチル及びエチルエステルが知られており、微量ではあるが非常に重要な成分です。また、2.5-ジメチル- 4-ヒドロキシ-3(2H)フラノンは、熟した感じの香気成分として知られています。
(update:2000.8.18)
ドリアンは東南アジアの果物を代表するもので、果物の王様ともいわれ比較的高価な果物ですが、削った鉛筆を思わせる円錘形のトゲに覆われた外観と強烈なにおいには、圧倒されてしまいます。シンガポールのホテルや飛行機では持ち込みを禁止されるほどです。
しかし果肉(実は仮種皮)は生クリームに似た上質な舌ざわりで、一度食べると病みつきになるほど美味だと言われています。ドリアンは生食のほか、現地では果肉を発酵させたり、砂糖菓子などを調理加工して利用されます。
香気は、タクアン、玉ねぎ様の部分とフルーティーな部分に分かれます。フルーティーな部分としては、酪酸エチル、2-メチル酪酸エチル、カプロン酸エチルなどが、玉ねぎ様の部分としてはメチルエチルトリサルファイド、エタンチオール、ジエチルジサルファイドなどの硫黄化合物が独特の香りを創り出しています。
(update:2000.8.4)
ラズベリーは、ヨーロッパキイチゴが果実の色からレッドラズベリーともいわれ代表的な種類として知られており、ほかに果実の色が黒紫色のブラックベリーやパープルラズベリーなどがあります。果実は初夏に熟し、多汁で甘く、多少の酸味があります。耐寒性があり、ヨーロッパ、北米、日本など世界各地で広く栽培されております。
香気成分については、これまで約210成分が報告されており、ラズベリー香気にはカルボニル類が寄与しています。特にα-イロン、β-ヨノン、ラズベリーケトン[=4-(p-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン]がキャラクターインパクト成分とされています。新鮮な野生種の香気は、栽培種と比べ強く好ましい香りであることが知られております。
食品香料に使用されるのはラズベリー香の調合香料が主であり、飲料、冷菓、乳製品、製菓、ジャム、フルーツソース類、洋酒カクテルなどに用いられています。香粧品香料には調合香料のフルーツノートとして使用されます。ラズベリー果実の甘い香りはジャスミン調の香りとよく調和することが知られていて、シャンプー、石けん、洗剤、浴剤、芳香剤をはじめ、香水などのフレグランス製品にも使用されることがあります。
(update:2000.7.25)
ブルーベリーは、ツツジ科、スノキ属の低木果樹で、6月上旬から7月下旬にかけて、一センチほどの丸い美しい紫色の果実をつけます。ブルーベリーという名は果実の青色に由来しています。スノキ属は、ブルーベリーの他に、クランベリー、ハックルベリーなど世界に百種以上もあり、主に北半球の寒冷地に分布していて、日本にも野生ブルーベリーといってもよい、クロマメノキ、コケモモなどが自生しています。ヨーロッパ、アメリカでは、野生種の採取が古くから行われ、ポピュラーな果物として、生食の他に、ジャム、ヨーグルト、タルト、肉料理のソースなどに利用されています。
香気成分は、トランス-2-ヘキセナール、トランス-2-ヘキセノール、シス-3-ヘキセノールなどのグリーン系の香りと、リナロール、ゲラニオールなどのフローラルな香り、それに酢酸などが主なものです。
(update:2000.6.23)
春の果物の代表としてまず思い浮かべるのは、あの赤い実のイチゴでしょう。イチゴはバラ科の植物で、北米とチリ中南部原産の二種がヨーロッパで交雑し現在の品種が生まれたそうです。
イチゴはその学名(フラガリア属)にもあるように香りの良い果物(フラグラント=芳香の意味)ですが、その香りは非常に変化しやすく、いたみも早いので、新鮮な朝づみイチゴがもてはやされます。香気成分はこれまでに三百種以上が分析されていますが、新鮮なイチゴの香気には、酢酸エチル、酪酸メチル、酢酸ブチル、カプロン酸メチルなどのエステル類をはじめとし、アルコール類、酢酸などが重要であるといわれています。また独特の甘い香りに関与する成分として、2、5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノンやラクトン類が知られています。
香料のタイプには、ナチュラルタイプ、ジャムタイプ、かき氷イチゴシロップのようなファンシータイプなどがあり、冷菓、乳飲料、菓子などに広く使用されています。
(update:2000.6.9)
温州みかんはわが国で発生し、日本人の手で独自に発展したもので、約三百年前鹿児島県で偶然実生してできたものです。ジャパニーズタンジェリンともいわれ、バレンシア、ネーブルなどのオレンジに比べると味、香りはやや及ばないが、その分しつこさがなくシンプルで、極めて日本的な味といえます。
温州みかんは果皮中には精油が少なく(約0.04%)積極的にその採取はなされません。精油成分はオレンジと同様97〜98%がテルペン系炭化水素でそのうちそのうち90〜93パーセントがd−リモネンです。特徴的な微量成分としては、テルペン系アルコールのリナロール、脂肪族アルデヒドのデカナールなどがあげられます。
(update:2000.5.18)
ライムは、サワーライムとスイートライムに大別され、後者はサワーライムとレモンの交配種と考えられています。
果汁100g中には、レモン同様にクエン酸が約6g含まれ、酸味剤としても用いられます。ビタミンCも約30mg含まれており、帆船全盛時代には、船員たちのビタミンC補給源として積み込まれたそうです。
ライム油は、飲料、冷菓、製菓用香料として重要で、圧搾油と蒸留油があり、後者が90%以上を占めています。香気は、前者がレモン的であるのに対し、後者がウッディなのですが、それは蒸留の際に油の成分に化学的変化が起こり、圧搾油にはない成分が生じるためと考えられています。特徴となる香気成分はターピネオール、シネオールなどで、その他の成分と調和しライム独特のシャープな香りを形成しています。
(update:2000.4.28)
ブドウの房のように果実が群がってつくことから名づけられたグレープフルーツは、1750年頃、西インド諸島のバルバドス島でブンタンの自然雑種として誕生しました。
グレープフルーツは生果だけでなく、ジュースや缶詰にも利用され、その生産量は全柑橘の10%をも占めるようになりました。主な生産地は、アメリカ、イスラエル、アルゼンチン、南アフリカ等です。
グレープフルーツの香気の特徴はヌートカトンで、果実中には約200ppm含まれています。その他の香気としては、シトラール、リナロール、炭素数 8〜10のアルデヒド、バレンセン、その他のエステルが挙げられます。また、独特のさわやかな苦みはナリンジンという物質に由来し、果実中に 0.03〜0.1%含まれています。
(update:2000.4.17)
世界の柑橘生産量の約70%を占めるバレンシアオレンジは、アメリカ・フロリダ州、メキシコが主要生産地です。原産はスペインのバレンシア地方といわれますが、いろいろな説があり今なお謎であります。
オレンジオイルは、果皮の圧搾、または果実全体を圧搾し果汁を得る時に分離して採油されます。
その香気成分は、d-リモネンが90パーセント以上を占めますが、特徴を示す重要成分は、分子の中に酸素を含む化合物です。炭素数8-12のアルデヒド類はフレッシュな果皮感を、シネンサールは甘い果汁感を、酢酸エチル、酪酸ブチルなどのエステル類は甘い熟した感じをかもし出します。
(update:2000.4.6)
レモンオイルはフレッシュで爽やかな香気をもっているため、とても人気が高く、特にフレーバー用としては、オレンジと並ぶ定番で、飲料用フレーバー等によく使われます。
レモンの香りの特徴を出す香気成分はシトラールですが、その他アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類などとの調和によって、レモン特有の香りがかもし出されます。
レモンの産地としてはカリフォルニアとイタリアが有名ですが、近年ではアルゼンチンやスペインの生産量が増えてきております。
(update:2000.3.17)